東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例
令和8年7月1日、「東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例」(出典:広報東京都)が施行されました。
この条例は、東京都・事業者・経済団体・都民それぞれの責務を明らかにつつ、事業者に対しての主体的な取組を促進している内容です。
条文の全文を読みましたが、文脈的に見て経営や組織運営の観点から深く考えさせられたのは、家庭生活に対する視点でした。
なぜかというと、具体的には第三条第三項「就業者の家庭生活と職業生活との両立に関しては、本人の意思が尊重されるべきであることに留意されなければならない。」にピンと来たからです。
この部分は、この条例の基本理念の一つにもなっている重要な規定ですが、本来家庭生活というものはあらゆる事情や境遇が折り重なってできています。独身者もいれば、別居中の夫婦もいる。ひとり親家庭や親の介護をされていたり、女性の中には管理職になりたくない人もいれば、あえて仕事をセーブしたい人もいます。
それこそ従業員の数だけ家庭生活があるといえます。そうした超多様な中で、従業員が自分一人だけで意思決定をするのは現実的ではないでしょう。働き方に対する意思決定は家族やパートナーとの話し合いの中で生まれ、揺らぎ、そして日頃の関係性に大きく左右されるからです。
この点、経営者やマネジメント層が直面する難しさがあります。会社は家族と言われなくなってかれこれ30年以上経ちました。もはや事業者は、本人の家庭内にまで立ち入ることは許されない時代です。
だからこそ求められるのが、条文にある「留意」という姿勢です。
本人が何を望み、どんな背景を抱えているのか、キャリア面談などを通して丁寧に耳を傾けることが大切になってきます。その対話のプロセスこそが留意であり、本当の意味で本人の意思を尊重することにつながります。
家庭生活という土台が安心・安定してこそ、従業員は持続的・主体的にパフォーマンスを発揮し、仕事との無理のない両立が可能になります。
現場の声を丁寧に聴く経営姿勢が、無理なく女性活躍を後押しし、この条例の上位理念である「持続可能で誰もが生き生きと暮らす社会の実現」へとつながっていくのではないでしょうか。

