Is This What We Want?
アニー・レノックス、ケイト・ブッシュ、ジャミロクワイ、ハンス・ジマー、ニッキー・スペンスなど著名なアーティストを含む1,000人以上のミュージシャンたちが、イギリスの著作権法改正に抗議するため「無音のアルバム」をリリースしたというニュースがありました。
出典:AIへの楽曲利用めぐり英著作権法改正に抗議、ミュージシャン1000人超が「無音アルバム」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)(2025-03-24閲覧)
出典:Copyright and Artificial Intelligence – GOV.UK(2025-03-24閲覧)
この「無音アルバム」にはスタジオの雑音が収録されており、 各曲のタイトルを組み合わせると「The British government must not legalise music theft to benefit AI companies」(英国政府はAI企業の利益のために音楽の盗用を合法化してはならない)というメッセージになります。
改正案が成立すると、AI企業がインターネット上で公開されている作品を無断で利用できるようになります。これを防ぐには、著作権者が自分の作品の利用を積極的に拒否(opt-out)しなければなりません。
このイノベーションは、AI企業にとってはより多くのデータにアクセスしやすくなりますので、AIモデルの開発が促進されることになります。また、AI開発に魅力的な場所として世界中から注目され、投資やAI企業を誘致することができます。
サセックス大学のアンドレス・グアダムス博士は、欧州政策分析センターのWEBレポートで次のように述べています。
『英国は人工知能の革新における世界的な拠点としての地位を確立しようとしている。成功するには著作権改革が必要だ。(中略) スターマー首相は英国をAI「超大国」にしたいと考えています。著作権は大きな障害となっています。』
引用:アンドレス・グアダムス「著作権が英国のAIへの野望を阻む」欧州政策分析センター(2025-03-24閲覧)
一方、ミュージシャンたちは、テクノロジー業界が不当に利益を得ているとして政府を非難しています。
AI音楽は自分たちの仕事を奪うものであり、音楽の独自性が失われ、創作意欲が低下し、オリジナル作品が評価されにくくなったり、音楽業界全体のイノベーションが阻害されるとして激しく怒っています。
エルトンジョンやポールマッカートニーもこの抗議に参加しています。
アーティストの生活を守る伝統的な著作権法をAI企業が無視する動きが始まっている。これにより、世界的な大手テクノロジー企業がアーティストの作品に自由かつ容易にアクセスし、人工知能を訓練して競合する音楽を作ることができるようになる。これにより、若いアーティストの収入はさらに薄まり、脅かされることになる。ミュージシャンコミュニティはこれを心から拒否する。
引用:エルトン・ジョン「英国の著作権制度改革案を批判するポール・マッカートニーを支持」ガーディアン(2025-03-24閲覧)
日本の現状
日本では、令和7年2月「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」(AI新法)が通常国会に提出されました。
政府は、日本のAI開発・活用は遅れているとした上で、「イノベーションを促進しつつ、リスクに対応するため、既存の刑法や個別の業法等に加え、新たな法律が必要である」としています。
なお、The Global AI Indexによれば、日本のAI能力ランキングは総合11位となっています。
出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案 | 内閣法制局(2025-03-24閲覧)
出典:The Global AI Index – Tortoise Media(2025-03-24閲覧)