JR鹿児島中央駅の改札口に駅員さんが手書きをした卒業証書が飾られているというニュースがありました。それはきれいな字で書かれており、とても心温まる素敵なエールでした。
参照記事:Yahoo!ニュース『鹿児島中央駅に駅員が手書きした「卒業証書」込められた思いとは?』KYT鹿児島読売テレビ(2025年3月6日)
近年はキーボードやタッチパネルが主流で、手書きは過小評価されがちです。一方、手書きの方がなんとなく「いい」のではないかといったイメージを持たれている方も少なくないと思います。
いったい何が、どうのように「いい」のでしょうか。キーボードと何が違うのでしょうか。少し気になりましたので、科学的根拠に基づいて調べてみました。
認知発達への影響
アメリカ国立医学図書館によれば、手書き(キーボードではなく物理的に何かを書きとめる作業)は記憶力や思考力などにとって非常に重要であり、脳の機能的発達に寄与するとのことです。
文字や単語を書くことは、特に幼児の脳の発達に役立つとされ、さらに読みやすい手書きはその内容に関係なく、学業成績の向上につながるなどの研究論文が発表されています。
また、クリスタ・グリフィン教授によると、書くことは子供にとって文字と音のつながりを育むのに役立つとのことです。
脳活動の増加
手書きは、タイピングでは再現できない方法で脳の多くの領域を活性化するようです。
ノルウェー科学技術大学心理学部発達神経科学研究所が行った研究によれば、手で文字を書くと、脳内の電気活動レベルが高くなり視覚や運動、感覚処理、記憶に関する領域を刺激し、概念の保持と理解が向上するそうです。
また、ペンや鉛筆を使って書くことで脳のつながりが強化される可能性も示唆しています。
さらに、学校で手書きの練習を続けることは不可欠であるとしながらも、テクノロジー技術の進化に遅れずについていくことも重であると結論づけています。
スウェーデンの手書き教育
最近、スウェーデンで興味深いニュースがありました。政府は、国立教育庁のデジタル戦略の提案を進めない意向を示し、デジタル化によってもたらされるリスクに特に注意を払うよう同庁に指示しました。
2022年に教育大臣に就任したロッタ・エドホルム氏は、
基本的な読み書きのスキルを伸ばすための最良の条件は、アナログ環境とアナログツールの使用です。だからこそ、生徒がペンと紙を使って作業し、教科書や職員のいる学校図書館を利用できることが重要なのです(一部抜粋と翻訳)
引用:Government investing in more reading time and less screen time – Government.se
と発言しています。
2024年1月からは、小学校レベルの全国テストもアナログになる予定だということです。
まとめ
つまり、手書きは、一言でいえば「脳にいい」ということになりそうです。
私が子どもの頃は、手書きしかなかったので特に何も思いませんでしたが、実は脳にいいことをしていたようです。これは、行き過ぎたデジタル教育によってもたらされた現代人の気づきではないでしょうか。
参考文献
引用:The effects of handwriting experience on functional brain development in pre-literate children – PMC
引用:Cognitive strategies utilised by early learners when writing alphabet-letters from memory – PubMed
引用:Why Writing by Hand Is Better for Memory and Learning | Scientific American
引用:Handwriting may boost brain connections more than typing does | Science News